東京国立近代美術館 (2025/4)
- Nebula
- Apr 27
- 6 min read
Updated: Apr 28
はじめに
タイトルにもある通り、東京国立近代美術館に行ってきました。(訪問日:2025/04/26)
趣味7割、大学の課題用(現代芸術論)3割みたいな動機。
特別展(ヒルマ・アフ・クリント展)が特に楽しかったです。


常設展
現代アートを期待して行ったのですが、そもそも名前に「近代」美術館とあるように、それ以外のものも多くありました。
染め物や日本画が想像以上に色々展示されていました。
とはいえそれ以外の作品も揃っており、面白かったです。


彫刻もありました。
こんなにシンプルな造形なのに、一目で人間だと分かってしまうのがすごい。

こんな作品もありました。
アメリカの兵士を模ったおもちゃを日本のメーカーが戦後に作っている、という所の皮肉的な文脈を表現しているそうです。

ヒルマ・アフ・クリントについて(特別展)
ちょっと特別展の内容は真面目に書きます。
混んでるけどおすすめです。
2025/6/15まで開いているらしいので近所の方は是非。
スウェーデン出身の画家ヒルマ・アフ・クリントは20世紀初頭に多くの作品を描いた。
彼女の絵画の多くは神秘主義そしてスピリチュアリズムを背景にしており、抽象絵画の潮流が確立される以前から斬新な表現を展開していた。
彼女の作品は近年になって評価が飛躍的に高まり、世界各地で特別展が相次いで開催されている。
なぜ今、彼女がこれほど注目されているのか?
その背景には、「彼女が女性アーティストであった事」「当時のアートの中心地から遠く離れたスウェーデンで独自の抽象表現を追求していた事」「神智学やスピリチュアリズムと結びついた霊的制作プロセスを重視していた事」という3つの要素が、21世紀の多様な価値観を尊重する流れと合致した事が挙げられるとされている。(参考:https://art.nikkei.com/magazine/2708/ )
クリントはまた、「死後20年間は抽象作品を公開しない」という旨の遺言を残し自らの作品をあえて時代の外に封じ込めた。
これは、彼女自身が当時の観衆には自身のビジョンが受け入れられないと判断したためであると解釈されている。
その結果彼女の絵画は長らく知られず、忘れられた存在となっていた。
しかし2018年、ニューヨークのグッゲンハイム美術館で開催された大規模回顧展「Hilma af Klint: Paintings for the Future」が約60万人を動員し、クリントを近現代抽象美術の物語を書き換える画家として確固たる地位に押し上げることとなった。
1904年、アフ・クリントは自身が結成した「5人(De Fem)」というグループの交霊の集いにおいて、高次の霊的存在から「物質世界からの解放や霊的能力の向上を目指す神智学的な教え」を絵として描くように告げられる。
この啓示により制作が始まったのが、全193点から成る「神殿のための絵画」である。
彼女はその後10年にわたり、小作品から大作まで多様な画面を生み出した。
制作はすべて霊的存在の指示のもとに行われ、彼女の身体が自然に動くままに描かれたとされている(自動書記)。
自動書記自体は彼女の初期の作品においても存在する。
その例として下のスケッチが挙げられる。
本作は児童書の挿絵に使われた絵画だが、裏面に自動書記によるものと思われる波線が残されている事が分かる。
![スケッチ、子どもたちのいる農場[『てんとう虫のマリア』]](https://static.wixstatic.com/media/9cc3ab_c118d03003c84d5691e8249783c487bc~mv2.jpg/v1/fill/w_980,h_1306,al_c,q_85,usm_0.66_1.00_0.01,enc_avif,quality_auto/9cc3ab_c118d03003c84d5691e8249783c487bc~mv2.jpg)
クリントは「神殿のための絵画」を、観る者が螺旋状に上昇しながら精神的旅を体験できる「円形の寺院」に設置する構想を抱いていた。
しかしながら、実際に寺院が建設されることはなかった。
ただし彼女のノートには建築図面や展示順序に関する詳細が記されており、「絵画と空間を一体化させる」という現代美術におけるインスタレーションの先駆けともいえる発想がそこに垣間見える。
彼女が作品を制作していた時代には、神智学やオカルトだけでなく、科学の分野でも肉眼では捉えられない世界を切り開く動きが盛んだった(例:エジソンやテスラによる電気の実用化、レントゲンによるX線の発見、キュリー夫妻による放射線の研究)。
当時、肉眼では見えない実在への探求は芸術・科学・霊性を横断して交錯していたのである。
「神殿のための絵画」の代表作である1907年制作の「10の最大物」シリーズは、人生の四段階(幼年期、青年期、成人期、老年期)を象徴する10作品から成る。
各作品は高さ約3.2メートル、幅約2.4メートルの大型テンペラ画(乾きが早い技法)である。
彼女は「楽園のように美しい十枚の絵画を創りなさい」という啓示を受け、このシリーズを完成させたとされている。

私は本作を実際に自分の目で鑑賞し、まずその圧倒的なサイズ感に驚かされた。
本作は「神殿のための絵画」に通底する他の作品と同様、二元性とその合一を根底に持っているように感じられる。
抽象絵画である以上多様な解釈が可能だが、例えばNo.1は男性性と女性性を併せ持つ幼年期(誕生?)を示しているかのようであり、その後の幼年期の絵では無垢さを象徴する明るい色使いとシンプルな形(円)が目立ってるように私の目に映った。
青年期では幼年期からの脱却(No.3、幼年期的な色使いの円から、オウムガイのように進化し多彩な色が集まる場所へ向かう表現)と、人間同士(特に男女?)の複雑な関わり合いが示唆されている。
成人期に入ると背景色がやや落ち着きを見せ、青年期までの活発さやスピード感が薄れ、男女の1対1の穏やかな関わり合いが表現されているように思えた。
またこの時期は、最後(No.8)に近づくにつれ、形が再び幼年期と同様の丸みを帯びていく。
老年期に至ると、それまでの成長の結果として花開き進化を遂げたような表現(No.9)が見られる。(ただしNo.10では円から正方形へと形が変わっており、その変化は私には解釈しきれませんでした。無限の記号が描かれていることから、進化によって形を変えつつも幼年期への回帰を示唆しているのではないかと考えはしましたが...)
彼女の作品は単に魅力的であるだけでなく、知的好奇心も刺激するものであった。
なぜなら彼女の作品群は目に見えない力を通して生命と進化の普遍的な循環を描き出しており、彼女の時代における科学的および精神的潮流を反映していたからである。
私は実際に本展覧会で彼女の作品を科学と神智学、知性と直感が融合した視点から体験する事ができたように思う。
彼女の作品は現代美術の多くの側面を先取りしており、今なお目に見える現象を超えた現実を理解しようとする人間の永続的な努力に対してユニークな洞察の機会を与え続けている。
おわりに
近かったので皇居に散歩しに行こうかと思ったのですが、なんか足が疲れてたのと曇ってて寒かったのでやめちゃいました。
そしたら家着く直前に豪雨に降られてびっくり。ギリギリどうにかなりました。
危なかった。☔️
最後までお読み頂きありがとうございました。
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