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The Killer (2023)を観て

  • Writer: Nebula
    Nebula
  • Apr 13
  • 3 min read

Updated: 5 days ago

“Stick to your plan. Anticipate, don't improvise.”


はじめに

少し前に観た映画、The Killer (2023) についての記事です。

この記事は2025年3月17日にNoteに投稿した内容を一部改変したものになります。



あらすじ

ネタバレ注意です。

序盤〜中盤の流れのみ書いています。

任務に失敗した暗殺者が繰り広げる、世界を股にかけた追跡劇を描くサイコサスペンス・スリラー。

感想

The Substance (2024) を鑑賞した際にも強く感じたことだが、“音”という要素は映画の質を大きく左右する極めて重要な要素である。

本作でも音響の設計は極めて緻密に練り上げられており、イヤホンから流れる音楽、額を撃ち抜く銃声、さらには駐車場の警報音に至るまで、どれも作品全体の緊張感を支える演出として機能している。


私はスリラー、特にスパイや暗殺を題材にした作品を好んで観ている。

過去1年を振り返ってもJohn Wick (2014) やThe Beekeeper (2024) など、所謂「殺し屋」を主題とした映画をいくつも鑑賞してきた。

しかしながら本作は、そうした作品群とは一線を画す存在である。

この映画は主眼がアクションではなく、人物像の内面描写に非常に重く置かれているのだ。


2時間という上映時間のうち、冒頭20分間は殺しのシーンすら存在しない。

主人公である暗殺者のモノローグと共に、まるで「プロフェッショナル 仕事の流儀~暗殺者編~」とでもいうべき番組を見ているかのような構成で進む。

そしてその最初の暗殺は失敗に終わる...この意外性が非常に良い。

その後の暗殺任務では基本的に成功を収めることからも、彼が無能ではないことは明らかだ。

しかし同時に、完全無欠の冷酷なマシンでもない。彼は感情を持ち、計画に反する行動もとる“凡人”として描かれている。


作中で彼が繰り返し唱える一連の戒律、すなわち“教典”の存在は非常に印象的である。

"Stick to your plan."

"Anticipate, don't improvise."

"Trust no one."

"Never yield an advantage."

"Fight only the battle you're paid to fight."

"Forbid empathy."

(“Forbid empathy. Empathy is weakness. Weakness is vulnerability.”)

"Each and every step of the way ask yourself 'what's in it for me?'"

"This is what it takes to succeed."

これらは彼の行動原理であり、職業倫理の集大成のように扱われている。

だが物語が進むにつれ、この“教典”のすべてに、彼は一度は反する行動を取ることになる。

そして彼はその逸脱に気づいてすらいない。モノローグにすら、その反省は現れない。


それでも彼は一貫してこの原則に則ろうとする。徹底した無感情と合理主義、他者への不信を貫く姿勢は、真面目さすら感じさせる。

“My process is purely logistical, narrowly focused by design."

"I’m not here to take sides."

"I serve no god, or country."

"I fly no flag."

"If I’m effective, it’s because of one, simple fact: I. Don’t. Give. A. F**k.”

現実に“暗殺者”という存在がいるとすれば、こうした価値観を持つ者なのかもしれない。


本作で特に心を惹かれたのは淡々と進む暗殺の描写である。

“My process is purely logistical.” という形容は特に的を射ている。

ド派手なアクションや非現実的なガジェットは一切登場せず、極めて現実的かつ冷静な手法によって任務が遂行される。

この暗殺は「暗殺業務」とでも言うべきなのだが、作中の暗殺は彼が勝手に行なっている復讐なので「業務」とするのは不適当だろう。

既にこの時点で彼は"教典"に反しているのだ。

彼は無口で完璧主義的な職人でありながら、時に失敗し、感情にも揺れる。

完璧ではないからこそ人間味があり、そこに深い魅力が宿る。


ストーリー自体はシンプルだが、主人公の精神的な“ゆらぎ”、すなわち合理性と感情、完璧主義と実際の不完全性が描かれることで、単なる復讐劇以上の厚みが生まれている。


個人的にはハッピーエンドが好きなため、ラストで主人公がガールフレンドと静かに日常を過ごす描写には安心と満足を覚えた。

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